2026/05/19
ハラスメントは減ったのに、なぜ職場はギスギスしているのか?——インシビリティ(礼節の欠如)を解く対話の場の設計
ハラスメント研修を実施し、相談窓口も整備したのに「職場がギスギスしている」「管理職が指導に消極的になった」——その原因は「インシビリティ(礼節の欠如)」かもしれません。本記事では、ピースマインド社の2026年人事トレンドでも注目されるインシビリティの正体と、レゴ®シリアスプレイ®を使った対話型研修で礼節文化を育てる方法を解説します。

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ハラスメント研修を実施し、相談窓口を整備し、管理職への教育も進めた。それでも「なんとなく職場の空気が重い」「以前より人間関係がギスギスしている気がする」という声が消えない——。この悩みを抱える人事担当者が、2025〜2026年にかけて急増しています。
その原因として今注目されているのが 「インシビリティ(礼節の欠如)」 という概念です。ハラスメントとは明確に言えないレベルの、日常的な無礼・無視・軽視の積み重ねが、組織の心理的安全性を静かに蝕んでいます。本記事では、インシビリティとは何か、なぜ今の職場で広がっているのか、そしてレゴ®シリアスプレイ®を活用した対話型研修がその解決に機能する理由を解説します。
インシビリティ(礼節の欠如)とは何か
インシビリティとは、 相手を傷つけようとする積極的な意志は曖昧なものの、他人への思いやりや配慮を欠いた、失礼で無作法な言動 のことです。カナダ・アカディア大学のマイケル・ライター博士が提唱し、日本では神奈川県立保健福祉大学大学院の津野香奈美教授が研究を牽引してきた概念です。
具体的には、以下のような言動が該当します。
- 挨拶をしても返さない・無視する
- 会議で発言しても、話題をすり替えて相手にしない
- 特定の人だけランチや雑談の輪から外れていても気にしない
- 部下の提案をろくに聞かずに却下する
- 不機嫌な態度をそのまま職場に持ち込む(フキハラ)
- メールやチャットの返信を意図的に遅らせる・しない
- 相手の担当業務なのに、判断を信用しない
いずれも「これはハラスメントですか?」と問われれば答えに詰まるような、グレーゾーンの言動です。しかしこれらが日常的に積み重なると、職場全体の空気は確実に悪化します。
ハラスメントとインシビリティの違い
| 項目 | ハラスメント | インシビリティ |
|---|---|---|
| 加害意図 | 明確(または強い傾向) | 曖昧・無自覚なことが多い |
| 判断のしやすさ | 比較的明確 | グレーゾーン・主観によるズレが大きい |
| 発生頻度 | 相対的に少ない | 日常的・広範囲に発生 |
| 指摘・対処のしやすさ | ルール・法律で対処できる | 指摘しにくく、放置されやすい |
| 組織への影響 | 深刻だが可視化しやすい | 静かに・広く・深く蝕む |
インシビリティの最も厄介な特性は、 「悪気なくついやってしまう」 という点です。本人に自覚がないため、指摘されても「そんなつもりはなかった」という反応が返ってきます。これが放置と蓄積を繰り返し、職場のギスギスを構造化していきます。
なぜ今、インシビリティが増えているのか
ハラスメント対策の「反動」として起きていること
パワハラ防止法の施行(2022年に中小企業にも適用)以降、多くの企業でハラスメント研修が徹底され、管理職への意識啓発が進みました。その結果、表面上の暴言・暴力・脅迫は減少しています。
しかし現場では、別の問題が静かに広がっています。
管理職が「指導することへの恐れ」を抱き始めているのです。
「厳しく言ったらパワハラと訴えられるのでは」「この指摘の仕方はアウトだろうか」——こうした不安から、必要な指導・フィードバックを控えるようになった管理職が増えています。指導の代わりに選ばれるのが、無言・無視・回避というインシビリティそのものの行動です。
「ハラスメントを防ごうとした結果、インシビリティが増えた」——この逆説的な構造が、2025〜2026年の職場で起きていることです。
リモートワーク・ハイブリッドワークが「見えにくさ」を加速する
対面であれば、表情・声色・その場の空気で「あの人、今日機嫌悪そう」「ちょっと冷たい態度だったな」という感覚的な把握ができました。しかしリモート・ハイブリッドワークの環境では、テキストの遅延返信・カメラオフ・リアクションの欠如といった形でインシビリティが表れても、「それが問題だ」と認識されにくくなっています。
被害を受けた側は「自分だけが気にしすぎているのか」と自己否定し、孤立感を深めます。一方、加害側は「別に普通にしていただけ」という認識のまま、問題は見えない場所で進行します。
「個人の礼節の問題」ではなく「構造の問題」
インシビリティは特定の悪い人間が引き起こすものではありません。津野教授の研究が示すように、 誰でも状況次第でインシビリティな言動を取りうる という点が重要です。
疲弊した管理職が余裕を失ったとき、成果プレッシャーで追い詰められた社員が同僚への配慮を失ったとき、組織全体がインシビリティを生みやすい状態になっていきます。これは個人の問題ではなく、 組織の構造・文化・環境の問題 です。
インシビリティが組織に与える5つの影響
インシビリティは「なんとなく嫌な感じ」という個人の不快感に留まりません。研究によれば、組織全体に以下の影響を与えることが確認されています。
①「螺旋状の悪化(Incivility Spiral)」が起きる
インシビリティを受けた人は、そのストレスを別の誰かへの無礼な態度として発散するケースがあります。被害者が次の加害者になる「悪循環の螺旋」が組織内に広がり、職場全体のコミュニケーションの質が底下がりしていきます。
②「認知資源の枯渇」で生産性が落ちる
「さっきの無視は何だったんだろう」「自分は嫌われているのか」——インシビリティを受けた後、人は無意識のうちにその意味を考え続けます。この反芻思考が認知資源を消費し、本来の業務への集中力・創造性・判断力を低下させます。
③ 心理的安全性が失われ、発言が萎縮する
「また無視されるかもしれない」という体験が積み重なると、会議での発言・提案・報告を避けるようになります。組織として最も必要な「本音の声・現場の情報・創造的なアイデア」が出てこなくなります。
④ 離職意向が高まる
インシビリティにさらされている社員は、「この職場にいたくない」という感情を蓄積します。研究では、インシビリティの頻度と離職意向の間に強い正の相関があることが示されています。
⑤ ハラスメントへの「エスカレーション」リスク
インシビリティは放置するとハラスメントへと発展するリスクがあります。逆にいえば、 インシビリティの段階で介入できれば、ハラスメントを予防できる という視点が、現在の人事施策において最も費用対効果の高いアプローチです。
「マイナスをゼロにする」から「プラスを積む」へ——発想の転換
従来のハラスメント対策は「マイナスをゼロに近づける」アプローチでした。「こういう言動はNG」という禁止事項を教え、被害を出さないようにする。
しかし、インシビリティ対策はこれとは異なる発想を必要とします。 「プラスを積む」——つまり、礼節ある言動・相互尊重・温かい関与を日常に増やしていく という方向性です。
これを「シビリティ(Civility)」と呼びます。インシビリティの対極にある概念であり、「相手への敬意・思いやりを持った言動」のことです。
シビリティが職場に浸透するとき、以下の変化が起きます。
- 「おはようございます」という一言が返ってくる職場になる
- 発言が無視されず、必ず誰かが反応してくれる場になる
- 管理職が「きちんと指導する」ことへの安心感を取り戻す
- ちょっとした困りごとを相談できる関係性が生まれる
- フィードバックが「攻撃」ではなく「サポート」として受け取られる
これらは「心理的安全性」とほぼ同義です。ピースマインド社の2026年人事トレンドレポートでも、インシビリティの改善とリスペクト文化の醸成が心理的安全性構築の最重要テーマとして挙げられています。
なぜ「知識を学ぶ」だけでは変わらないのか
インシビリティ対策の研修として、e-ラーニングや座学型の知識研修が提供されています。しかし「知識として理解した」だけでは、日常の言動はなかなか変わりません。
その理由は、インシビリティが 「意識的な悪意」ではなく「無自覚な習慣」 から生まれているからです。「よくない」と頭で分かっていても、ストレスがかかった瞬間・忙しい場面・気を緩めた瞬間に、無意識にインシビリティな行動が出てしまいます。
変化に必要なのは、以下の2段階です。
第1段階:自分の無自覚なパターンに気づく
「自分はどんな場面でインシビリティな行動を取りやすいか」を客観的に認識することが出発点です。他者の行動を批判するのではなく、自分自身の言動の癖・自動反応のパターンを可視化する内省のプロセスが必要です。
第2段階:代替行動を体験として身につける
「インシビリティな言動の代わりに、どう振る舞うか」を知識として覚えるだけでなく、実際に体験・実践することで行動の選択肢として定着させます。
この2段階を実現するには、 「安全に自己開示できる場」と「他者と対話しながら気づく体験」 が不可欠です。
レゴ®シリアスプレイ®がインシビリティ解決に機能する理由
クック・ビジネスラボが提供するレゴ®シリアスプレイ®(LSP)を活用した対話型研修は、インシビリティ解決の2段階に対して、以下の理由で高い効果を発揮します。
「正解がない場」が自己開示の防衛を解く
インシビリティの自覚を促すためには、「自分のここが問題だった」という痛みを伴う気づきが必要です。しかし直接的な指摘やロールプレイでは、防衛反応が起きやすく、「自分は悪くない」という自己正当化が生まれます。
LSPでは「手を動かして作品をつくる」という非言語のプロセスから始まります。「正解がない場」であることが冒頭で体感されるため、防衛反応が下がり、自分でも気づいていなかった本音のパターンが作品として現れやすくなります。
全員が「語られる側」になる体験が礼節を育てる
LSP研修では、全員が作品をつくり全員が発表します。そして発表者が語る間、他の参加者は 「聴く側」として作品に向き合います。
「あなたの話を聴いています」「あなたの表現に興味があります」という態度を全員が取り続けるこの構造が、シビリティ(礼節)の体験そのものです。1日の研修を通じて、「自分の言葉が誰かにきちんと受け取られる体験」を全員が積み重ねます。
管理職の「指導への萎縮」を解くフラットな場が生まれる
管理職が部下指導に消極的になる根本には、「どこからがアウトか分からない」という不安があります。LSPの場では、役職・年功に関係なく全員が同じルールで語り合います。
管理職が「自分はこういう場面で部下への言い方が荒くなりやすい」と作品を通じて語り、部下が「こういう場面で指摘されると苦しい」と語り合う——このプロセスが、言語化できなかった「お互いの認識のズレ」を可視化します。指導する側・される側が互いの内側を知ることで、「配慮ある指導」の具体的なイメージが生まれます。
「気づきの言語化」から「明日の行動」につなぐ設計
LSP研修の締めくくりには、必ず「次に実践することの宣言」を組み込みます。「明日から、朝の挨拶を自分から先にする」「返信を溜め込まず、24時間以内に何かしら返す」——小さく具体的なアクションを、他者の前で語ることで行動へのコミットメントが生まれます。
インシビリティ対策としてのLSP研修:設計パターン
パターン①:管理職向け「気づきと代替行動」ワークショップ(半日型)
目的:自分のインシビリティなパターンの認識と、代替行動の言語化
- お題①:「自分がストレスを感じたとき、職場でどんな行動が出やすいかを形にする」
- お題②:「部下や同僚に対して、自分が配慮を欠いてしまいやすい場面を形にする」
- お題③:「明日から1つ変えるとしたら、どんな言動を選ぶか」
自分の「無自覚なパターン」を作品として外在化し、他の管理職と語り合うことで、「自分だけじゃない」という正常化と、「自分はこう変えられる」という方向性を同時に得られます。
パターン②:チーム全体向け「礼節文化づくり」ワークショップ(半日〜1日型)
目的:チームとして「どんな関わり方を大切にするか」の共通言語をつくる
- お題①:「このチームで自分が安心して働けると感じる瞬間を形にする」
- お題②:「チームメンバーに大切にしてほしい関わり方を形にする」
- お題③:「理想のチームコミュニケーションを形にする」(グループ作品)
「ハラスメントとは何か」を学ぶのではなく、「自分たちが大切にしたいコミュニケーションとは何か」をチームで語り合うことで、ルールではなく文化として礼節が根づきます。
パターン③:全社向け礼節文化浸透ワークショップ(全社会議・キックオフへの組み込み)
目的:「インシビリティゼロ」ではなく「シビリティが当たり前の組織」を目指す宣言の場
- お題①:「自分がこの会社で働いていて、礼節を感じた体験を形にする」
- お題②:「この会社をどんな雰囲気の職場にしたいか、自分が貢献できることを形にする」
- お題③:「私たちが大切にしたい職場の姿」(グループ作品→全体共有)
全社規模で「礼節を大切にする」という宣言を体験型でつくることで、経営方針ではなく「自分たちが決めたこと」として浸透します。
実施概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対象 | 管理職・チーム全体・全社員(目的に応じて設計) |
| 参加人数 | 3名〜200名以上(1グループ推奨5名・通常4〜6名) |
| 半日プログラム | 3〜4時間 / 200,000円〜(税別) |
| 1日プログラム | 6〜7時間 / 350,000円〜(税別) |
| オンライン体験会 | 約2時間 / 5,000円/人(税別) |
| リードタイム | 問い合わせから通常2〜4週間(1週間以内は要相談) |
▶ インシビリティ対策・礼節文化醸成の研修相談はこちら(初回無料)
まとめ:ハラスメント対策の「次」に取り組むべきこと
ハラスメントを「なくす」ことに集中してきた10年間が終わり、次のフェーズが始まっています。問われているのは、 「礼節のある組織をどうつくるか」 です。
インシビリティは個人の悪意ではなく、組織の構造・文化・環境が生み出します。だからこそ対策も、個人への教育だけでなく、 チームとして「どんな関わり方を大切にするか」を対話で決める というアプローチが必要です。
レゴ®シリアスプレイ®を活用した対話型研修は、管理職の「無自覚なパターン」を可視化し、チーム全体が「礼節ある場」を体験し、その文化を自分たちで宣言する場をつくります。「ギスギスしている」と感じている人事担当者の方は、まずお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. インシビリティとは何ですか?ハラスメントとどう違いますか?
A. インシビリティとは「礼節の欠如」と訳される概念で、相手への思いやりや配慮を欠いた言動を指します。ハラスメントと異なるのは、加害意図が曖昧で本人も無自覚なことが多い点です。挨拶を無視する・発言を無視するなど、日常的な「グレーゾーン」の言動が積み重なって組織に影響を与えます。
Q. インシビリティが職場に与える影響はどのくらい深刻ですか?
A. 研究では、インシビリティにさらされた社員の生産性が最大25%低下し、仕事への注意力が38%減少するという結果があります。また離職意向との強い相関も確認されており、放置するとハラスメントにエスカレートするリスクもあります。個人の不快感では済まない組織的なコストが発生します。
Q. インシビリティ対策にLSP研修を使うのは、ロールプレイ型研修とどこが違いますか?
A. ロールプレイ型は「正しい行動」を演じる練習ですが、LSP研修はブロックで「自分のパターン」を形にするため、無自覚な行動を先に可視化できます。防衛反応が下がった状態で自己認識が深まるため、「知識として知っている」から「実際に行動が変わる」への橋渡し効果が高いです。
Q. 管理職が部下指導に消極的になっている問題に、LSP研修はどう機能しますか?
A. 管理職向けのLSP研修では「自分が指導を躊躇する場面」「部下に言いにくいことを言わずに済ませている場面」をブロックで形にします。他の管理職と語り合うことで正常化効果が生まれ、「配慮ある指導」の具体的なイメージが生まれます。1回の半日研修(200,000円〜税別)から実施できます。
Q. インシビリティ対策研修は、ハラスメント研修の代わりになりますか?
A. 代わりではなく「次のステップ」として位置づけることを推奨します。ハラスメント研修が「マイナスをゼロにする」施策なら、インシビリティ・シビリティ研修は「プラスを積む」施策です。両方を組み合わせることで、ハラスメントが起きにくい組織文化の土台がつくられます。
Q. インシビリティ研修はどんなタイミングで実施するのが効果的ですか?
A. 3つのタイミングが特に効果的です。①エンゲージメントサーベイで「職場の雰囲気が悪い」という結果が出たとき、②管理職研修の一環として年1〜2回の継続実施、③全社会議・キックオフに組み込んで「礼節文化の宣言」の場として活用するとき。いずれも半日3〜4時間から設計できます。
Q. チーム全体でインシビリティ研修を受ける場合、上司も一緒に参加すべきですか?
A. 目的によって異なります。「チームの礼節文化をつくる」目的なら上司・部下混在での実施が効果的です。一方「管理職自身の無自覚なパターンを見直す」目的なら、管理職だけで集まる設計のほうが本音が出やすいです。クック・ビジネスラボでは目的に応じた参加者設計をご提案します。
Q. インシビリティは研修1回で改善できますか?
A. 1回の研修で気づきと変化の入り口は生まれますが、文化として定着させるには継続が必要です。年2回以上の実施を推奨しており、リピート率約80%のクック・ビジネスラボでは継続設計をご提案しています。研修後の1on1・ピアグループとの組み合わせでさらに効果が高まります。
Q. インシビリティ研修の効果をどう測定すればいいですか?
A. エンゲージメントサーベイに「職場で自分の意見が尊重されている」「同僚・上司から礼節ある対応を受けている」などの設問を加え、研修前後で比較することが一般的です。クック・ビジネスラボでは満足度4.71 / 5.0点・推奨率96%(2025年実施)の実績データもご参考いただけます。
Q. 問い合わせから研修実施まで、どのくらいの期間が必要ですか?
A. 通常2〜4週間が目安です(1週間以内は要相談)。エンゲージメントサーベイの結果が出た直後など「すぐに対応したい」というケースも対応実績があります。「まず話だけ聞きたい」という段階からご相談いただけます。
Q. インシビリティ研修は中小企業でも導入できますか?
A. はい。3名から実施可能で、管理職が2〜3名という少人数構成でも十分な効果が得られます。むしろ中小企業は経営者・管理職・一般社員の距離が近く、1回の研修で組織全体に変化が生まれやすい傾向があります。半日200,000円〜(税別)から設計できます。