2026/06/26
若手が辞める理由は“給与”ではなくなった——2026年の離職データが示す「能力発揮」と「心理的安全性」
2026年6月発表の株式会社リクルートマネジメントソリューションズ調査で、若手の実際の離職理由は「給与」より「仕事で能力・持ち味を発揮できない」が上位に。待遇改善だけでは止まらない離職の本質と、エン株式会社の新入社員7,000名分析が示す入社初期のズレを、累計100社以上・6,000名超の研修現場から見えた解釈とあわせて読み解きます。心理的安全性の高い職場を、どう設計すればよいのかが見えてきます。
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給与を上げても若手の離職は止まらない——2026年データが示した転換点
2026年の若手離職データには、人事担当者の常識を覆す変化が表れています。リクルートマネジメントソリューションズが2026年6月に発表した「若手の離職実態調査2026」によれば、実際の離職理由として「仕事で能力・持ち味を発揮できない」が前回調査の12位から2位へと急上昇。一方で「給与」は2位から6位へと後退しました。 若手の離職は、待遇では止まらない局面に入った ということです。本記事では、累計100社以上・6,000名超の研修現場で見えてきた知見をもとに、この転換点の意味と、企業がいま打つべき施策を解説します。
若手の「辞めたい」は、3年間で減っていない
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査によれば、在職している若手社員のうち 62.2%が「会社を辞めたいと思ったことがある」 と回答しています。これは2023年の58.8%とほぼ同水準で、人事施策や働き方改革が叫ばれてきた3年間でも、若手の離職意向は減っていないことを意味します。
辞めたいと思う理由の上位には「仕事にやりがい・意義を感じない」「給与が安い」が並びます。ここで重要なのは、「辞めたい」と思うこと自体は、もはや特別な感情ではなくなっているという事実です。人事担当者が向き合うべきは、「辞めたい気持ちをゼロにする」ことではなく、 何が若手を踏みとどまらせるのか に視点を移すことです。
100社以上の研修現場で若手社員と接してきて感じるのは、「辞めたい」という言葉の裏側にある感覚が、以前とは変わってきているということです。かつては「もっと給料が欲しい」「ブラックすぎる」といった具体的な不満が中心でした。今は「ここにいる意味が分からない」「自分が活かされている感じがしない」という、より抽象的で言語化しづらい感覚が増えています。この変化を捉えることが、若手定着施策の出発点になります。
実際の離職理由は“給与”から“能力を発揮できない”へ
リクルートマネジメントソリューションズの調査で最も注目すべき結果は、 実際に離職した人の理由の順位変動 です。
| 離職理由 | 前回調査の順位 | 2026年調査の順位 |
|---|---|---|
| 労働環境(労働時間・休日など) | 1位 | 1位 |
| 仕事で能力・持ち味を発揮できない | 12位 | 2位(急上昇) |
| 給与 | 2位 | 6位(後退) |
「能力・持ち味を発揮できない」が12位から2位へと急上昇した一方で、「給与」が2位から6位へ後退している——この順位の逆転こそ、本記事が伝えたい核心です。
「能力を発揮できない」という感覚は、本人にとっても言語化しづらいものです。「上司の指示通り業務はこなしている。でも、自分の良さが活きている気がしない」「会議で発言しても、何となく流されている気がする」——こうした感覚は、不満として上司に伝えるには輪郭がぼやけすぎていて、辞表を出す段階になって初めて言葉になります。
ここから言えるのは、 若手の本音を引き出すには、本人が言語化できていない感覚を可視化する場が要る ということです。表面的なヒアリングや満足度調査では捉えきれない領域に、いまの若手定着施策の鍵があります。
離職を防ぐ職場の共通点は「率直に言い合えること」
ではどんな職場が、若手の離職を防いでいるのか。リクルートマネジメントソリューションズの調査では、 離職を防ぐ職場の特徴として以下の3つが上位 に挙がっています。
- 率直に意見を言い合える心理的安全性のある職場
- 目標をともに達成したいと思える仲間がいる職場
- メンバーから学べることが多い職場
また、若手が離職を「思いとどまる理由」も、近年変化しています。以前は「転職するのが怖い」「経済的に困る」といった消極的な理由が中心でした。それが現在は「ここで成長できそう」「やりがいがある」「会社に共感できる」といった、 積極的な理由が前面に出てきている のです。
ここで重要なのが「心理的安全性」の正しい理解です。心理的安全性は「ぬるま湯」とは違います。エイミー・エドモンドソン教授の定義では、心理的安全性とは「対人関係のリスクを取ることが安全だと感じられる職場の状態」を指します。 意見の対立や率直な指摘ができる、建設的に議論を交わせる関係 のことであり、誰も傷つけない優しい関係のことではありません。
「うちの職場は仲がいい」「みんな優しい」という評価が、必ずしも心理的安全性が高いことを意味しないのは、この定義のためです。むしろ「指摘し合えない優しさ」は、長期的には「自分の持ち味が活かされていない」という感覚を若手に蓄積させ、離職に向かわせます。レゴ®シリアスプレイ®を活用した対話の場づくりについてはレゴ®シリアスプレイ®とは(徹底ガイド)で詳しく解説しています。
新入社員ほど「初期のズレ」が定着を左右する
リクルートマネジメントソリューションズの調査が示す若手全体の傾向を、入社初期の解像度で裏付けるデータがあります。エン株式会社の「HR OnBoard」が2026年6月に公開した新入社員7,000名分析です。
この調査で明らかになったのは、 要フォロー層と判定された新入社員の約2割が、改善されないまま1年を終えている という事実です。「上司との話しやすさ」も入社初期に高く、その後低下する傾向が確認されており、25卒(2025年4月入社)に至っては、入社初期から低水準で始まっています。
「研修中は前向きだったのに、配属後に変わってしまった」「上司とは話せていると思っていたら、退職届を出された」——人事担当者から繰り返し聞く話ですが、データもこの実感を裏付けています。
なぜ「初期のズレ」が拡大していくのか。研修現場で見えてくるのは、 配属直後の数ヶ月で蓄積する“言葉にしづらいズレ”が、半年後には「ここは自分の居場所ではない」という確信に変わる という構造です。新入社員に絞ったチームビルディングのアプローチについては、別記事で配属後のチームビルディングを詳しく扱います。
「能力発揮」と「心理的安全性」を、どう職場で起こすか
ここまでのデータを踏まえて、企業が打つべき施策は3つに整理できます。
一人ひとりの「持ち味・大事にしている軸」を可視化する
「能力を発揮できない」という若手の感覚は、上司側にも「この子の強みがいまひとつ分からない」という感覚と対になっています。両者が言語化できていない以上、1on1で「あなたの強みは何ですか」と聞いても、表面的な答えしか返ってきません。
研修現場では、ブロックや絵などの「言葉以外の表現手段」を使うことで、本人すら言語化できていなかった価値観や持ち味が可視化される瞬間が頻繁に起きます。実際の参加者からは「自分でも気づいていなかった、仕事で大事にしている軸が見えた」「同期の意外な強みが分かって、見方が変わった」という声が多く寄せられます。これは盛り上がるだけの研修では決して得られない、行動変容への入口です。
率直に言い合える土台を、対話の設計でつくる
心理的安全性は「自然と生まれる」ものではありません。職場の構造が「声の大きい人が話し、おとなしい人は黙る」という設計になっていれば、どれだけ「率直に話していいよ」と呼びかけても、若手は本音を出しません。
100社以上の研修で見えてきたのは、 全員が必ず作品をつくり、全員が必ず自分の作品について語らなければ進まない構造 をつくれば、普段おとなしい人も自然に語り出すという事実です。問題は個人の資質ではなく、場の構造にあります。
施策を「やって終わり」にしない
「研修をやったけれど、翌週には元通り」というのは、多くの人事担当者が直面する課題です。原因は、研修内の体験が「消費」で終わり、職場の課題と接続されていないことにあります。
研修内の気づきを「自社の現実」に接続するお題設計と、研修後の1on1や行動計画の振り返り設計を組み合わせることで、行動変容まで届きます。クック・ビジネスラボでは事前ヒアリングをもとに、各社の課題に合わせて問いとプログラムを個別設計しています。「研修で失敗するパターン」についてはレゴ研修で失敗するケースと対策もあわせてご覧ください。多様な体験型ワークの選び方はユニークなチームビルディング研修10選で扱っています。
2026年の若手定着、企業が変えるべきは「給与」より「対話の設計」
リクルートマネジメントソリューションズとエン株式会社の2026年データをつなげると、若手定着の核心が浮かび上がります。 若手は「成長したい・ともに成果を出したい・自分の持ち味を活かしたい」と思っている 。この健全な思いに応えられない職場が、若手を失っているのです。
給与を上げても、福利厚生を整えても、若手の「能力を発揮できない」という感覚は埋まりません。必要なのは、一人ひとりの持ち味と価値観を可視化し、率直に言い合える対話の場を設計することです。
クック・ビジネスラボは2016年にレゴ®シリアスプレイ®の国際認定資格を取得し、三菱商事・AWS・PwC Japan・NTTデータ・ソニー・パナソニックコネクトなどを含む累計100社以上・6,000名超に研修を提供してきました。2025年に主要都県庁向けに実施した研修では満足度4.71/5.0点・推奨率96%、リピート率は約80%です。 大手企業100社以上の実績を持ちながら、各社の課題に合わせて問いとプログラムを個別設計する ——この設計力が、若手定着という抽象的な課題に対しても、現場で動く施策へと落とし込むことを可能にしています。
問い合わせから研修実施まで通常2〜4週間(1週間以内は要相談)で対応しています。導入をご検討の方は、無料相談・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。サービス内容は内容・料金ページ、導入事例は導入実績をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 給与を上げれば若手の離職は本当に減らないのですか?
A. 2026年のリクルートマネジメントソリューションズ調査では、実際の離職理由として「給与」は2位から6位に後退し、「仕事で能力・持ち味を発揮できない」が12位から2位に急上昇しました。給与改善の効果が完全にないわけではありませんが、待遇だけでは若手の離職を止められない局面に入っています。特に「自分の能力が活かされていない」という感覚への対応が、近年は決定的に重要です。
Q. 心理的安全性が高い職場と、ぬるま湯職場の違いは何ですか?
A. 心理的安全性は「対人関係のリスクを取ることが安全だと感じられる状態」であり、率直な指摘や建設的な意見の対立ができる関係を指します。一方ぬるま湯は「誰も指摘し合わない優しさ」で、本音は語られず表面的な調和だけが保たれている状態です。前者は若手の成長を促し、後者は「自分の持ち味が活かされていない」感覚を蓄積させ離職を招きます。
Q. 「能力を発揮できない」という若手の感覚は、どう可視化すればよいですか?
A. 1on1で「あなたの強みは何ですか」と直接聞いても、本人が言語化できていないため表面的な答えしか出てきません。レゴブロックや絵など「言葉以外の表現手段」を使うことで、本人すら気づいていなかった価値観や持ち味が立体的に可視化されます。100社以上の研修現場では「自分でも気づいていなかった軸が見えた」という参加者の声が一貫して聞かれます。
Q. 心理的安全性は研修で本当に高められますか?
A. 一度の研修だけで完成するものではありませんが、 場の構造を変える体験を一度することで、職場での対話の質が変わるきっかけになります 。全員が必ず発言する構造、立場を超えて対等に語る経験を一度すれば、その後の会議や1on1の進め方に変化が表れます。研修だけで完結させず、1on1の改善や行動計画の振り返りと組み合わせることが定着の鍵です。
Q. 若手だけを対象に研修すれば離職は減りますか?
A. 若手だけへの介入では限定的な効果しか得られません。離職の構造は「若手が能力を発揮できない場」がつくられていることにあり、その場をつくっているのは上司・管理職層です。若手向けの研修と並行して、管理職向けに「対話の質を高める研修」を実施することで、相乗効果が得られます。
Q. 中小企業でも実施できますか?費用はどれくらいかかりますか?
A. はい、3名から実施可能です。半日プログラムは200,000円〜、1日プログラムは350,000円〜(いずれも税別)が標準です。「まず話だけ聞いてみたい」「自社の課題に合うか相談したい」という段階でも無料相談・お問い合わせを承っています。
Q. 2026年に新しく登場した若手向け施策のトレンドはありますか?
A. 2026年のトレンドは「導入の有無」ではなく「行動変容まで設計しているか」に問いが移っていることです。研修を単発で終わらせず、研修後の1on1や行動計画の振り返りまで一体で設計するアプローチが主流になりつつあります。また体験型研修の中でも、参加者の本音や持ち味を立体的に可視化する手法への注目が高まっています。
Q. 研修で離職は本当に減るのですか?効果測定はどうすればよいですか?
A. 研修単体で離職率を直接下げることはできません。ただし「会議で発言しない人が話すようになった」「1on1の質が上がった」といった行動変容が職場に生まれれば、結果として離職の予兆を早期に察知でき、対応が可能になります。効果測定は「研修満足度」だけでなく、研修後3ヶ月後の1on1の質・会議での発言量・離職予兆チェックの変化など、行動指標で見ることをおすすめします。
Q. 入社して何年目までを「若手」と呼ぶのが一般的ですか?
A. 一般的には入社1〜5年目を若手と呼ぶことが多く、特に2〜3年目は「キャリアの方向性を再考する」タイミングとして離職リスクが高い時期です。リクルートマネジメントソリューションズの2026年調査でも、この層の離職意向は依然として高水準で推移しています。新入社員(1年目)固有の課題については、新入社員のチームビルディングに焦点を当てた別記事で扱います。
Q. 経営層に若手定着の重要性をどう説明すればよいですか?
A. 「採用コストと比較すると、定着施策の費用対効果は明らか」という説明が経営層に響きます。一人の若手を新規採用するコストは平均で数十〜数百万円かかります。一方、研修や対話設計への投資は半日200,000円〜(税別)から始められ、複数名の定着率向上が期待できます。2026年調査の「能力発揮」「心理的安全性」というキーワードは、経営層が共感しやすい言葉でもあります。
Q. 著者の経歴と実績を教えてください
A. クック・ビジネスラボ代表・森琢也は、トヨタ系自動車部品メーカーで経営企画・事業企画に従事した後、2010年に中小企業診断士試験に合格。2016年にレゴ®シリアスプレイ®の国際認定資格を取得し、講師歴15年以上、累計100社以上・6,000名超の研修実績があります。詳細は企業概要・講師プロフィールをご覧ください。
【著者情報】
森琢也(もり たくや) 株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役 中小企業診断士/レゴ®シリアスプレイ®認定ファシリテーター 講師歴15年以上・累計100社以上・6,000名超の研修実績 企業概要・講師プロフィール
【参考データ】
エン株式会社「HR OnBoard」新入社員7,000名分析(2026年6月19日公開) リクルートマネジメントソリューションズ「若手の離職実態調査2026」(2026年6月19日公開)