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公開日:2026/10/23

実例⑤:入社半年の早期離職を防ぐ新入社員フォローアップ研修——モチベーションを回復させる1日の設計【2026年版】

入社半年は、新入社員が「やっていける」と「やっぱり違う」に分かれ始める時期です。本記事では、本社とグループ会社の新入社員が合同で受講したフォローアップ研修を実例に、受講者が「今までの研修で一番学びがあって、楽しかった」と語った1日の設計を紹介します。各セッションのねらいと仕掛け、受講者が持ち帰った9つのラーニングポイント、レゴ®ブロックを2か所だけに使った理由、リテンションにつながる3つの効果まで、講師の所感をもとに具体的にお伝えします。

目次

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レゴ®シリアスプレイ®専用キット——約48個のブロックで構成されたワークショップ用教材
クック・ビジネスラボ_レゴ®シリアスプレイ®研修

入社半年のフォローアップ研修は、下がったモチベーションを「次の半年の行動」に変える1日です

入社半年のフォローアップ研修とは、配属後に下がりかけたモチベーションを回復させ、次の半年に何をするかを本人に設計させる場です。振り返りだけで終われば中だるみし、気合いだけで終われば翌週には元に戻ります。 できたことで自信を取り戻し、緩みに気づき、目線を上げて行動を決める。 この流れを1日の中で順番に起こせるかどうかで、早期離職の芽を摘めるかが決まります。

フォローアップ研修は、振り返りが中心になるほど午後に集中が切れやすい研修です。入社半年は新入社員が最も揺れる時期で、その時期に開く1日を、ただの同窓会にしてしまうのはもったいない。

この記事では、本社とグループ会社の新入社員が合同で受講したフォローアップ研修を実例として、 受講者が「今までで一番学びがあって、楽しかった」と言った1日の設計と、その意図 をご紹介します。各セッションで何を狙い、どんな仕掛けを置き、受講者に何が起きたのか。そして受講者が持ち帰った9つのラーニングポイントまで、講師の所感をもとに具体的にお伝えします。

株式会社クック・ビジネスラボは、三菱商事・AWS・PwCをはじめとする100社以上、累計6,000名以上の研修を担当してきたレゴ®シリアスプレイ®研修の専門会社です。ただしこの研修で、レゴは主役ではありません。その理由もあわせてお伝えします。

なお、 フォローアップ研修を時期別にどう組むか (配属3ヶ月後・6ヶ月後・2〜3月)はZ世代の新入社員フォローアップ研修、何をすればいいかにまとめています。本記事はその「設計の実例」にあたります。

なぜ入社半年が、早期離職の分かれ目になるのか

入社半年は、新入社員の状態が「やっていける」と「やっぱり違う」に分かれ始める時期です。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(2025年10月24日公表)によると、2022年3月に大学を卒業して就職した人の3年以内離職率は33.8%でした。3人に1人が3年以内に辞めています。

その分岐は、多くの場合、入社半年前後に始まっています。今回の研修でも、受講者の多くは入社時と比べて顔つきが変わり、仕事の話を自分の言葉でできるようになっていました。一方で、 思ったような配属にならなかった、想像していたほど仕事ができなかった、すぐに役に立てなかった。 そうした挫折感から視線が足元に向き、先を見通せなくなっている受講者も、最初の回から一定数見えていました。

この揺れは表に出ません。入社半年で「辞めたい」と口にする人はほとんどいないからです。だからこそ、半年の節目に同期と集まる場を置く意味があります。若手が辞める理由が給与ではなく「やりがい」や「能力発揮」に移っている実態は若手が辞める理由は「給与」ではなくなったで、配属後の定着に何が効くかは配属後の定着に効くチームビルディング研修で詳しく整理しています。

事例:本社とグループ会社の新入社員が合同で受けた、入社半年のフォローアップ研修

ここからは実際の研修です。本社とグループ会社の新入社員が合同で参加する大手企業グループで、入社半年のタイミングに実施した1日研修です。同じ内容を複数回に分けて実施し、1回あたり20〜35名、4名1グループのアイランド形式で、本社とグループ会社の受講者を完全に混ぜて編成しました。社名と詳細なプログラムは非公開のため、設計の考え方と意図を中心にお伝えします。

この研修には、ほかにない前提が2つありました。ひとつは、 講師が4月の入社時研修の一部クラスも担当していたこと。 入社直後の新入社員の様子を知っているので、半年でどこが変わり、どこでつまずいているかが見えやすくなります。もうひとつは、 同じ企業でOJTトレーナー向けの研修も同じ講師が担当していたこと。 新入社員を指導する側が何を学び、何を期待しているかを、研修の中で具体的に開示できました。

研修の目的は「自信をつける」と「気を引き締める」の両輪

ご相談の段階で、人事のご担当者と最初に合意したのはこの1点でした。 入社半年の新入社員には、できたことを自覚して自信を取り戻す必要と、慣れによる緩みに気づいて気を引き締める必要が、同時にあります。

どちらか片方に寄ると失敗します。自信をつけるだけなら「楽しかった」で終わり、気を引き締めるだけなら説教になります。この両輪を1日の中でどう回すかが、設計の出発点でした。

1日を貫く4つの軸

当日は、次の4点を1日の軸として進行しました。

  • 「できていないこと」だけでなく「できるようになったこと」も同じ重さで見る
  • 結果ではなくプロセスを切って振り返り、次の打ち手に変える
  • ストレスは避けられないものとして、付き合い方と頼り方を身につける
  • 目線を上げてありたい姿を描き、そこから逆算して行動を具体化する

研修の冒頭では、受講者にこう伝えています。「成功」の反対は「失敗」ではなく、「成功」と「成長」の2つしかない。ただし、振り返らなければ成長にはならない。

1日の流れ

1日は大きく7つのブロックで構成しました。

ブロックテーマねらい
導入チェックイン(レゴ使用)経験に優劣はないこと、意味づけて初めて価値になることを体感する
午前①入社半年の振り返りできたことで自信を回復し、同時に緩みにも気づく
午前②仕事の進め方(PDCAと報連相)指導する側の期待を知り、自ら意図を取りに行く
午前③〜午後①論理的な伝え方とアサーティブ報告から提案へ。断る・確認する・条件を出すを角を立てずに
午後②ストレスとの付き合い方ひとりで抱え込まず、早めに手を打つ
午後③2年目のありたい姿(レゴ使用)目線を上げ、同期の力を借りて初心を取り戻す
終盤次の半年のアクションプラン「続ける・始める・やめる」を具体化し、同期の前で宣言する

午前で「現在地」と「仕事の型」を確認し、午後で「内面のケア」から「次の半年」へつなぐ。この流れ自体が、集中を切らさないための設計の一部です。

「下がっていたモチベーションが回復した」——受講者の声

研修後、受講者から次のような声が寄せられました(研修参加者の声より)。

  • 本当にあっという間だった
  • 今までの研修で一番学びがあって、かつ、楽しかった
  • これからもこんな研修をたくさん受けたい
  • 下がっていたモチベーションが、この研修で大きく回復した
  • 3年後に振り返ったとき、この研修がターニングポイントになったと言うと思う

人事の立場で注目していただきたいのは、 「学びがあった」と「楽しかった」が同じ人から同時に出ている ことです。研修の満足度は「楽しかった」だけでも高く出ます。しかしそれでは翌週には元に戻ります。逆に学びだけを詰め込むと、1日は持ちません。

そしてもうひとつが、「下がっていたモチベーションが回復した」という声です。冒頭でお伝えした、挫折感から目線が足元に向いていた状態が、本人の言葉で「回復した」と表現されています。 リテンションの観点で見たとき、これが最も価値のある一言です。

講師の側から見た事実もひとつ添えておきます。 同じ内容で複数回実施した全回を通じて、居眠りをする受講者は一人もいませんでした。 9時台から17時までの長丁場で、眠気の出やすい午後の時間帯を含めてです。盛り上がりと学びの両立については「楽しかった」で終わる研修と、成果が残る研修は何が違うのかでも詳しく扱っています。

セッションごとのねらいと、仕掛けた工夫

ここからは、各セッションで何を狙い、どんな仕掛けを置いたのかを順にお伝えします。お題やケースの具体的な文言は伏せますが、 設計の意図 はできるだけ具体的に書きます。

導入:講師の失敗談と、1分間のレゴで「経験に優劣はない」を体感させる

1日の最初にやったのは、講師自身の自己開示です。簿記の試験に3回落ちた学生時代、配属先で怒られ続けた10年間。 「できない」ことを最初に講師が話すことで、受講者も弱音を出してよい場だと分かります。 振り返りのワークで本音が出るかどうかは、ここでほぼ決まります。

続いて、レゴ®ブロックを使った1分間のワークを2つ行いました。ひとつは、同じキットを使って1分間でできるだけ高いタワーをつくるワークです。 同じ部品、同じ1分、似た経歴の同期でも、全員の作品がまったく違う形になります。 ここから「半年で生まれたそれぞれの経験に、優劣はない」という1日の前提を、講義ではなく体験として共有しました。

もうひとつは、直感で部品を1つ選び、選んだあとで意味づけて30秒で語る練習です。選んだ瞬間は理由が分からない。でも語り始めると意味が出てくる。 「行動しただけでは価値は生まれず、意味づけて初めて価値になる」 という振り返りの本質を、身をもって理解してもらうための仕掛けです。

入社半年の振り返り:「私がダメだった」と言わせない

半年間の気持ちの浮き沈みを1本の線で描くモチベーショングラフを起点に、グループで半年を共有しました。弱音やうまくいかなかった話から入り、そこから先へ目を向けていく流れは、同期という関係性の中で特に有効に働きます。

このセッションで最も強調したのは、 「私がダメだった」という振り返りを決して行わないこと です。採用選考を経て入社した人の人格に問題があるのではなく、仕事のどこかの工程がうまくいかなかっただけ。だから工程を切り分けて特定し、やり方と仕組みを変える。それが振り返りだと、繰り返し伝えています。

入社半年の新入社員は、真面目な人ほど自分を責めます。自己肯定感を削らずに改善へ向かう型を持たせることが、このセッションのねらいです。

仕事の進め方:指導する側の本音を開示する

指示の受け方、悪い報告ほど早く上げること、相談には自分の案を添えること。入社時研修で学んだ内容を、半年の実体験に接続して再確認しました。

ここで効いたのが、 同じ講師がOJTトレーナー向けの研修も担当していたこと です。指導する側が何を学び、新人に何を期待しているかを、具体的に開示しました。同じ新入社員について「質問に来ないので困っている」と語るトレーナーもいれば、「自分から聞きに来るので優秀だ」と語るトレーナーもいる。この実例を示すと、受講者の表情が変わります。

上司の説明が足りないと感じたときこそ、責めるのではなく自分から補いに行く。 受け身からの脱却を、説教ではなく「相手の本音」で後押しする のがこのセッションの設計です。

論理的コミュニケーション:「報告」から「提案」へ

結論から話す型、So What/Why So、事実と意見の切り分けといった基本を整理したうえで、一歩踏み込んだ演習を行いました。 職場に対する改善提案を「結論+根拠3点」で組み立て、想定される反論への打ち返しまで準備して、上司役に提案する 演習です。愚痴ではなく、こう変えたらもっと良くなるという提案です。

2年目以降は、作業の報告から、提案や意見具申へと求められる水準が上がります。そのことを講義で伝えるのではなく、実際に提案を組み立てる体験を通じて伝えました。

アサーティブ:「この条件ならできます」で自分を守る

手一杯のところに追加の依頼を受けた場面を題材に、4つの自己表現タイプとDESC法を確認し、ロールプレイで練習しました。中心に据えたのは、 「できません」とも「できます」とも言わず、「この条件であればここまでできます」と条件付きで返す型 です。

受講者に挙手してもらうと、つい断れずに抱え込むタイプが多数派でした。アサーティブは、相手を説得する技術である前に、自分を守る技術です。抱え込みすぎることが不調につながるという点で、このセッションは次のメンタルヘルスへの橋渡しにもなっています。

メンタルヘルス:ストレスをゼロにせず、付き合い方を持ち帰る

若いうちから大きな責任を任される環境では、ストレスを完全になくすことは現実的ではありません。そこでこのセッションは、ストレスをゼロにする話ではなく、 ストレスとどう向き合い、どう受け流すか に焦点を当てました。

具体的には、お金と時間をかけずに5分以内でできる気晴らしをグループで出し合い、互いの選択肢を持ち帰る形にしています。自分にはない方法が同期から出てくることで、実用的な引き出しが増えます。

あわせて、困ったときには必ず誰かを頼ること、一人で抱え込まないことを、講師自身の経験も交えて伝えました。一方で、メンタルヘルスをネガティブに語りすぎると、かえって不安を強めてしまいます。 セルフチェックに当てはまる項目があっても、それは「すぐに不調だ」という意味ではなく、休息や相談を考えるタイミングの目安だ という伝え方を徹底しています。

2年目のありたい姿:質問の練習を、発表の前に置く

このセッションは、 当初の計画より時間を厚く配分しました。 最初の回で、多くの受講者が目線を下げてしまっている状態が見えたためです。就職活動のときには「これをやりたい」と思って入社したのに、挫折感で視線が足元に向いている。この状態のまま2年目を迎えるのは惜しい。もう一度目線を上げ、初心に帰ってモチベーションを取り戻すこと、そしてそのときに同期の力を借りることに、時間をかけました。

手順は次のとおりです。まずレゴ®ブロックで「3年後に目指す理想のビジネスパーソン像」をつくります。ここで置いた工夫が、 作品の発表の前に「質問の演習」を挟んだこと です。第三者の作品を題材に、どんな質問をすれば発表者の考えを深められるかをグループで出し合ってから、自分たちの発表に入りました。

その結果、発表後の質疑の質が明らかに変わりました。同期同士が互いの考えを深く引き出し合える状態ができています。相手の気づきを引き出す問いを立てる力は、2年目以降の仕事にもそのまま活きる力です。

さらに、グループ内での発表のあと、 他のグループのメンバーに自分のグループの作品を紹介する「他己紹介」 を行いました。より多くの同期の将来像に触れ、刺激を受けてもらうためです。3年後の像を描いたら、最後に1年後へ時間軸を戻し、次のアクションプランへ接続しました。

アクションプラン:未来から「成し遂げました」と語る

ありたい姿と現在地のギャップから逆算し、次の半年の行動を 「続けること」「新たに始めること」「やめること」 の3つに整理しました。真面目で一生懸命な人ほど、やることだけが積み上がって溢れます。新しいことを始めるには何かをやめる必要がある、という点は意識的に強調しています。

書き方にも工夫を入れました。個人で黙々と書くのではなく、 ペアでインタビューをし合いながら書き進める 形です。人に話すことで具体化が進みます。あわせて、想定される障害とその乗り越え方まで考えてもらいました。うまくいく想定だけでなく、逆境を想定し、そこから逆転するシナリオまで描いておくことが、実際に困難が起きたときの落ち着いた対処につながります。

最後は、具体化した計画に前向きな感情を乗せるため、 未来の時点から「成し遂げました」と語ってもらうインタビュー形式のワーク を設けました。収穫の前に祝う日本の祭りと同じ考え方です。気恥ずかしさの伴うワークですが、受講者は趣旨を汲み取り、照れずに真剣に取り組み、互いに拍手を送り合っていました。最後に、続けること・始めること・やめることを同期の前で言葉にし、明日から始めるアクションを2つ決めて1日を終えています。

受講者が持ち帰った9つのラーニングポイント

プログラムに書かれた内容に加えて、1日を通して受講者に伝えた視点があります。講師の所感から、9つを整理します。

ラーニングポイント伝えた内容
経験は、意味づけて初めて価値になる行動しただけでは何も生まれない。同じ半年を過ごしても、振り返った人とそうでない人には大きな差が生まれる
「振り返ることがない」はない気づきは振り返りからしか生まれない。材料がないのではなく、気づこうとしていないだけ
できたことは、意識しないと見えない足りないところに目が向くのは優秀な証。ただし成長も、意識して振り返らなければ見落とす
人を責めず、やり方と仕組みを変える「私がダメだった」ではなく、どの工程が良くなかったのかを切り分ける。「頑張ります」「意識します」では次につながらない
慣れは成長の証であり、危険信号でもある1件の重大事故の背後には多数のヒヤリとした出来事がある。慣れてきた今だからこそ、見過ごさない
問いを立てる力相手の気づきを引き出す質問は、他者への貢献であり、自分も変える。問いが変われば、引き出せる情報も成果も変わる
逆境を想定し、逆転のシナリオまで描く人は想定外に弱く、慌てた対処が二次被害を生む。悲観シナリオと逆転の筋道を先に持っておく
ワクワク感が人を動かす「こうなりたい」という感情は行動と決断の源になる。ワクワクさせてもらうのではなく、自らつくり出し、周囲を動かす側へ
付き合う相手が自分をつくる身近な5人の平均が自分になるといわれる。同期は、本音を言い合え、互いの変化に気づける得がたい存在

9つに共通しているのは、 研修の場だけで使う知識ではなく、明日からの仕事の見方を変える視点 だということです。フォローアップ研修の価値は、新しいスキルの習得よりも、半年の経験をどう意味づけ直すかにあります。

レゴは主役ではなく伏線——1日の中で2回だけ使った理由

レゴ®シリアスプレイ®研修の専門会社として意外に聞こえるかもしれませんが、この研修でレゴ®ブロックを使ったのは、 午前の導入と、午後の「2年目のありたい姿」の2か所だけ です。

当初の設計では、レゴを使う時間は合わせて45分ほどでした。実施を重ねるなかで「ありたい姿」のパートを厚くしたため、最終回の記録では、午前の導入が約25分、午後のありたい姿が質問演習と他己紹介を含めて約1時間40分。合わせて約2時間です。それでも 1日の約3分の2は、レゴを使わない時間 です。仕事の進め方、論理的な伝え方、アサーティブ、ストレスとの付き合い方、アクションプラン。いずれも入社半年の新入社員が、配属先で実際につまずいている内容です。

では、なぜその2か所なのか。理由は3つあります。

1 緩急が、長丁場の集中を支える

午前の冒頭で一度ブロックに触れ、いったん離れて、午後にアサーティブとメンタルヘルスという堅い内容を扱う。そのうえで再びブロックを使って将来に目を向ける。 この緩急のある構成が、1日の集中を最後まで支えました。 手を動かす時間があることで、眠気の出やすい午後を含めて、全回を通じて居眠りをする受講者はいませんでした。

2 冒頭で「作法」を覚えておくと、午後は対話に時間を使える

導入で「直感で部品を選び、あとから意味づけて語る」作法を一度体験しているので、午後の本格的な作品づくりでは、改めて進め方を説明する必要がありません。 初めてブロックに触れる人に、いきなり自分の将来をつくらせても手が止まります。 冒頭の短いワークは、午後の作品づくりと対話を成立させるための伏線です。

3 形が残るから、同期の考えを「代弁」できる

ブロックでつくった作品は、机の上に形として残ります。そのため、本人がその場にいなくても、同じグループのメンバーがその人の考えを他のグループに紹介できます。 紙に書いた目標では、他人が代わりに語るのは難しい。 他己紹介が成立したのは、立体物ならではの利点です。受講者は自分のグループ以外の多くの将来像に触れ、刺激を受けて1日を終えています。

ありたい姿のワークを終えたところで、講師は受講者にこう念を押しています。「これはレゴの研修じゃないですからね。間違っても職場に戻って『レゴが楽しかった』とは言わないでください」。紙と鉛筆で将来像を書くのはしんどい。だから、まず手を動かして自然に話せる状態をつくる。レゴは、考える・話す・共有するための道具にすぎません。 フォローアップ研修の目的は「レゴを体験すること」ではなく、「次の半年の行動を変えること」 です。当社がご提案するのは「レゴ研修」ではなく、ご要望に合わせて全体をゼロから設計した研修であり、レゴはその中で最も効く場所に入れるスパイスです。手法そのものの仕組みや、心理的安全性との関係はレゴ®シリアスプレイ®研修が心理的安全性を高める理由にまとめています。

中だるみしない1日をつくる5つの設計

受講者が「あっという間だった」と言った1日の裏には、集中を切らさないための設計がいくつも入っています。セッションごとの工夫とは別に、1日全体に効かせた設計を5つご紹介します。

1 振り返りの合間にインプットを挟む

フォローアップ研修が中だるみする最大の原因は、振り返りだけで1日を埋めることです。 半年を振り返り、共有し、また振り返る。これを繰り返すと、午後には集中が切れます。

この研修では、振り返りのワークのあとに必ず「型」のインプットを置きました。うまくいかなかった仕事を振り返ったら、PDCAで分解する型を渡す。伝え方に悩んだ経験を出したら、結論から話す型を渡す。 振り返りで出てきた悩みに、すぐ道具を渡す。 この往復が緊張感を保ちます。

2 午前と午後で、求める思考の種類を変える

午前は「現在地の確認」と「仕事の進め方・伝え方の再点検」。午後は「内面のケア」から「次の半年の設計」へ。頭を使う型のインプットは集中力の高い午前に、自分の内面に向き合うワークと未来を描くワークは午後に置いています。

3 講義とワークの比率を、セッションごとに変える

1日を通して一定のリズムにすると、受講者はリズムに慣れて集中が落ちます。この研修では、セッションによってはワークが7割以上を占めます。講義は短く、要点だけ。 人は聞いているときより、話しているときのほうが集中が続きます。

4 回ごとの「場の性格」に合わせて、運び方を変える

同じプログラムでも、回によって場の性格はまったく違いました。グループ会社からの参加者が多い回は、開始直後こそ緊張感がありましたが、午前が終わる頃には誰が本社で誰がグループ会社か分からないほど打ち解け、昼休みに一緒に食事に行く姿も見られました。一方、本社の受講者が中心の回は、気心が知れているぶん最初から本音の対話が成立しやすい半面、慣れによる緩さも出やすく、議論が盛り上がりすぎて時間が押す場面がありました。

そこで、緩みやすい回では時間管理とロールプレイの締め方を意識的に強め、人数の多い回では全体発表よりグループ内での共有を基本にしています。 プログラムは同じでも、場の運び方は回ごとに変えています。

5 事前課題は1枚に絞り、「やらないこと」を決める

事前課題は、A4・1枚の振り返りシートだけにしました。当日持参とし、事前回収もしていません。

検討の段階では「上司から一言もらってくる」という課題の案もありました。しかし、本人経由で上司のコメントを集めると、どうしても忖度が入ります。そこでこの課題は取りやめ、上司やトレーナーの視点は研修の中で講師が伝える形に変えました。 良い研修は、何を入れたかより、何を入れなかったかで決まります。

リテンションは「辞めない理由」ではなく、「次にやること」と「同期」で決まる

フォローアップ研修をリテンション施策として見るとき、人事の方に押さえていただきたい効果は3つあります。

ひとつ目は、 次の半年にやることが、本人の言葉で決まっていること です。この研修では、続けること・新たに始めること・やめることを同期の前で言葉にし、明日から始めるアクションを2つ決めるところまで、全回で到達しました。辞めない理由を探すより、次にやることが見えている状態をつくるほうが、定着には効きます。

ふたつ目は、 同期が「互いの変化に気づける存在」になること です。半年ぶりに同期と顔を合わせ、日常業務から離れて本音で話す。弱音を含めて話せる関係性を確かめ、「悩んでいるのは自分だけではない」と実感する。その機会そのものが、この研修の重要な価値でした。研修の最後には、同期の誰かが落ち込んで「自分が悪い」と抱え込んでいるときは、 「あなたのすべてが悪いわけではない」と声をかけてあげてほしい こと、必要に応じて専門の相談窓口を勧めてほしいことも伝えています。研修の1日が終わったあとも、同期同士が支え合える状態を残すためです。

みっつ目は、 2年目に向けた役割の変化を、半年前から意識できること です。入社2年目には後輩を迎え、作業の報告から提案や意見具申へと、求められる水準が上がります。論理的コミュニケーションで提案まで踏み込み、ありたい姿を3年後から1年後へ引き戻したのは、この変化に備えるためです。

研修で決めたアクションは、上司との面談やOJTの場で確認する仕組みと組み合わせると、効果が長く続きます。

「ゼロから設計する」とは——事前の改訂と、実施しながらの重心調整

この研修のプログラム案は、 最初のご提案から実施までに、第6版まで改訂を重ねています。

最初の打ち合わせでいただいたご要望は、仕事の進め方とコミュニケーションをもっと厚くしたい、アクションプランに時間を使いたい、というものでした。そこでこれらのセッションを拡充し、代わりにメンタルヘルスのパートは要点に絞りました。投影資料を作り込む過程でも、ワークの時間配分を細かく見直しています。

設計は、実施が始まってからも止めていません。 最初の回で、多くの受講者が目線を下げている状態が見えたため、2年目のありたい姿のパートに当初より時間を厚く配分しました。 また導入部分は、講義を圧縮してレゴの1分間ワークと「意味づけて語る」作法の練習を前倒しで組み込みました。複数回の実施のなかで、最も手応えの大きかった設計変更です。

既成のプログラムに当てはめるのではなく、ご要望と受講者の状態から1日を組み立て直す。そして、目の前の受講者を見て重心を動かす。 これが当社のいう「ゼロから設計する」です。

この事例では、PDCAや論理的な伝え方、アサーティブ、ストレスとの付き合い方、そしてレゴを使ったワークまでを、講師1名が1日を通して一貫して扱っています。さらに同じ講師が、4月の入社時研修の一部クラスとOJTトレーナー向けの研修も担当していました。代表・森琢也が中小企業診断士として経営の現場に関わり、15年以上にわたって研修講師を務めてきたからこそ、 入社時研修、指導する側の研修、フォローアップ研修を、1本の文脈としてつなげて設計できます。 事前ヒアリングでは毎回60分程度お時間をいただき、受講者に投げる問いの文言まで、各社の状況に合わせて設計します。

入社時研修の1日の進め方は実例①:新入社員・若手社員向けレゴ®シリアスプレイ®研修で公開しています。

フォローアップ研修を外部に依頼するときの判断軸

新入社員フォローアップ研修を外部に依頼するときは、次の5点で比べてください。

  • 振り返りだけで1日を埋めていないか 振り返りの合間に「型」のインプットが入っているかを確認する
  • 自社の要望に合わせて、セッションを足したり削ったりできるか 既成プログラムの当てはめでは、受講者の状態に合わない
  • 手法が目的に従っているか 特定の手法を全編に使う設計は、手法が目的化している可能性がある
  • ありたい姿とアクションプランに十分な時間を割いているか 最後の15分で書かせるだけでは、翌週には忘れられる
  • 受講者の状態を見て、実施しながら重心を動かせるか 同じプログラムでも、回ごとに場の性格は違う

3つ目は、当社のようなレゴ®シリアスプレイ®の専門会社にも当てはまります。 「レゴ研修をください」というご相談をいただいても、目的によってはレゴを使う時間を最小限にする、あるいは使わないことをご提案する場合があります。 手法を売るのではなく、目的を達成する1日を設計するのが私たちの仕事だからです。

実施条件と費用の目安

クック・ビジネスラボの新入社員フォローアップ研修の実施条件と費用の目安です。

項目内容
実施人数5名〜300名(推奨:1グループ5名前後/300名超は要相談)。人数が多い場合は複数回に分けての実施も可能
所要時間2時間〜2日(標準:半日3〜4時間)。本記事の事例は1日6〜7時間の構成
料金体系20万円〜(税別)+プログラム企画設計費用(人数、時間、企画内容により異なります)
お申し込み期限最短で実施日の1週間前まで(目安はお問い合わせから通常2〜4週間)
事前ヒアリング毎回60分程度。受講者に投げる問いの文言まで設計

クック・ビジネスラボでの企画設計費を含めたご発注額の目安は、 10名前後・2〜3時間の最小構成で20万円〜(税別) 、 3〜4時間・30名前後の半日プログラムで30万〜35万円(税別) です。内容に応じてプログラム企画設計費用が加わる場合があります。本記事の事例のような1日プログラムは、人数と内容に応じて個別にお見積りします。

このほか、レゴ®教材の送料は別途、首都圏以外での実施は交通費・宿泊費を実費でいただきます(首都圏は交通費不要)。 金額を決めるのは人数・時間・実施場所・カスタマイズの範囲の4つ なので、条件が固まっていない段階でのお見積りも承ります。プログラムと料金の詳細は研修の内容・料金ページに、ほかの企業での実施事例は導入事例ページにまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 入社半年のフォローアップ研修は、何を目的にすべきですか?

A. 「自信をつける」と「気を引き締める」の両輪です。できたことを自覚して自信を取り戻しつつ、慣れによる緩みにも気づかせる。そのうえで次の半年の行動を本人に設計させます。どちらか片方に寄ると、「楽しかった」だけの研修か、説教の研修のどちらかになります。

Q. 振り返り中心のフォローアップ研修が中だるみするのはなぜですか?

A. 振り返りと共有を繰り返すだけでは、午後に集中が切れるからです。振り返りで出てきた悩みに対して、すぐにPDCAや伝え方の「型」を渡すインプットを挟むと、緊張感が保てます。振り返りとインプットの往復が、中だるみを防ぐ基本の設計です。

Q. レゴ®シリアスプレイ®の専門会社なのに、レゴを使うのは一部だけなのですか?

A. はい。目的によって使う場所と量を決めています。本記事の事例では、レゴを使ったのは午前の導入と午後の「2年目のありたい姿」の2か所で、合わせて約2時間でした。1日の約3分の2はレゴを使わず、仕事の進め方や伝え方、ストレスとの付き合い方、アクションプランに充てています。

Q. レゴを使わない時間は、何をしているのですか?

A. 仕事の進め方(PDCAと報連相)、論理的な伝え方と提案の演習、相手も自分も尊重する伝え方(アサーティブ)、ストレスとの付き合い方、次の半年のアクションプランです。いずれも入社半年の新入社員が配属先で実際につまずいている内容で、ご要望に合わせて厚くするパートと絞るパートを決めます。

Q. 下がったモチベーションは、1日の研修で本当に回復しますか?

A. 回復のきっかけはつくれます。本記事の事例でも「下がっていたモチベーションが、この研修で大きく回復した」という声がありました。ただし1日で終わらせず、研修で決めたアクションを上司との面談やOJTの場で確認する仕組みを組み合わせると、効果が長く続きます。

Q. 6〜7時間の研修で、受講者の集中は続きますか?

A. 設計次第で続きます。本記事の事例では、同じ内容で複数回実施した全回を通じて、居眠りをする受講者はいませんでした。振り返りの合間にインプットを挟む、講義とワークの比率を変える、手を動かすワークを午前と午後に分けて置くなど、1日の緩急を設計に組み込んでいます。

Q. 本社とグループ会社の新入社員を一緒に受講させても大丈夫ですか?

A. 問題ありません。むしろ混ぜることをおすすめします。本記事の事例でも完全に混ぜてグループを編成し、午前が終わる頃には誰が本社で誰がグループ会社か分からないほど打ち解けていました。普段接点のない同期と話すことで、悩んでいるのは自分だけではないと気づけます。

Q. 事前課題はどのくらい出すべきですか?

A. 1枚で十分です。本記事の事例ではA4・1枚の振り返りシートを当日持参とし、事前回収もしていません。事前課題を増やすと受講者は研修の前から疲れます。上司のコメントを集める課題のように、忖度が入りやすいものは研修の中で代替するほうが効果的です。

Q. メンタルヘルスの内容は入れたほうがよいですか?

A. 入社半年の時期には入れることをおすすめします。ただしストレスをゼロにする話ではなく、付き合い方を持ち帰る設計にします。本記事の事例では、5分以内でできる気晴らしを同期で出し合い、一人で抱え込まないことを伝えました。セルフチェックは不調の判定ではなく、相談を考える目安として扱います。

Q. 研修内容は、どこまで自社に合わせて変えてもらえますか?

A. 全体を組み立て直すところまで対応します。セッションの拡充や圧縮、事前課題の取捨選択、ワークの時間配分まで、ご要望と受講者の状態に合わせて設計します。本記事の事例では、プログラム案を第6版まで改訂し、実施が始まってからも受講者の状態を見て時間配分を調整しました。

Q. OJTトレーナー向けの研修とあわせて依頼するメリットはありますか?

A. あります。指導する側が何を学び、新人に何を期待しているかを、フォローアップ研修の中で具体的に伝えられるからです。本記事の事例でも、トレーナー側の本音を開示したことで、新入社員が自分から意図を取りに行く姿勢を後押しできました。入社時研修から一貫して担当すると、半年の変化も見えやすくなります。

Q. 1回あたり何名まで受講できますか?

A. クック・ビジネスラボでは5名〜300名まで対応しており、300名を超える場合は要相談です。フォローアップ研修では、1回20〜35名程度に分けて複数回実施する形も可能です。人数が多い回は発表の方式をグループ内共有中心に切り替えるなど、回ごとに場の運び方を調整します。

Q. オーダーメイドだと費用は高くなりますか?

A. クック・ビジネスラボの料金体系は20万円〜(税別)に、内容に応じてプログラム企画設計費用が加わる場合がある形です。企画設計費込みの目安は、10名前後・2〜3時間の最小構成で20万円〜、3〜4時間・30名前後の半日で30万〜35万円(いずれも税別)です。1日プログラムは個別にお見積りします。教材の送料と首都圏以外の交通費は別途です。

Q. 依頼から実施まで、どのくらいの準備期間が必要ですか?

A. クック・ビジネスラボでは、お申し込みは最短で実施日の1週間前まで、目安はお問い合わせから通常2〜4週間です。ただし複数回に分けて実施する場合や、プログラムを大きく作り込む場合は、打ち合わせを重ねるため1〜2か月前にご相談いただけると安心です。秋の実施を予定される場合は夏前の相談をおすすめします。

まとめ——フォローアップ研修は、手法ではなく設計で選ぶ

入社半年は、新入社員が「やっていける」と「やっぱり違う」に分かれ始める時期です。この時期のフォローアップ研修は、下がりかけたモチベーションを回復させ、次の半年の行動を本人に設計させる場として位置づけてください。

そのために必要なのは、 できたことで自信を取り戻す、人を責めずにやり方を変える、指導する側の本音を知る、ストレスとの付き合い方を持つ、目線を上げてありたい姿を描く、そして続ける・始める・やめるを同期の前で決める という流れを、1日の中で順番に起こすことです。中だるみさせないための緩急も、その流れの中に組み込みます。 レゴ®シリアスプレイ®は、その設計の中で最も効く場所に入れるスパイスです。

当社がご提案するのは「レゴ研修」ではなく、ご要望と受講者の状態に合わせてゼロから組み立てる1日です。新入社員フォローアップ研修のご相談は無料相談・お問い合わせからお気軽にどうぞ。進行の雰囲気を先に確かめたい場合はオンライン体験会(約2時間・5,000円/人・税別)もご利用いただけます。

【著者情報】

森琢也(もり たくや) 株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役 中小企業診断士/LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ 講師歴15年以上・累計100社以上・6,000名超の研修実績 企業概要・講師プロフィール